DX人材とは?求められるスキルや職種、育成方法を解説

DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する企業はますます増え、DX人材の獲得に注力する企業も珍しくなくなりました。しかし、「DX人材を獲得したいが、どのような人を採用すればいいのか」と悩んでいる企業の方もいるでしょう。

この記事では、DX人材の重要性や求められるDX人材の職種の他、DX人材を獲得・育成する方法について解説します。

目次

DX人材とは?

DX人材には明確な定義はありませんが、一般的には「DXを推進・実行する人材」のことを意味します。2020年末に経済産業省が発表した「DXレポート2」※では、DX人材は、「自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用してそれをどう改革していくかについての構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人材」としています。

注目すべきは、ビジネスマンとしての高いスキルも求められている点でしょう。DXは、企業を根幹から変革させて競合優位性を確立することが目的です。その推進と実現には、データとデジタル技術だけでなく、自社の事業に対する知見やビジョンを掲げて推進するリーダーシップといった多様な能力も必要となります。

企業におけるDX人材の重要性

企業におけるDX人材の重要性は、ますます増してきています。IPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「デジタル・トランスフォーメーション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査」では、多くの企業がデジタル技術による自社の競争力低下を懸念していました。既存ビジネスを変革する必要性も強く認識しており、DX専門組織を設置する企業は増加傾向にあると報告されています

DX推進に取り組む企業が増える一方で、同調査ではDX人材は大幅に不足していることも判明しました。DX人材の職種別に不足感をアンケート調査したところ、すべての職種で「大いに不足」という回答が最多となりました。DXの推進に必要なスキルを兼ね備えた人材はまだ少なく、その確保に企業が苦労している現状が浮き彫りになったのです。

DX推進人材の不足感

DX推進人材の不足感

DX人材の不足は、DX推進を遅らせる要因となります。DX推進に注力する企業は今後も増えることが予想されるため、DX人材の重要性も高まっていくと推測されます。

不足しているDX人材とは?

では、多くの企業で不足しているDX人材とは、どのような人材なのでしょうか。総務省の「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究の請負」に基づいて、DX推進における役割を踏まえて解説します。

DXの主導者

DXの主導者は、デジタル技術と自社の経営・ビジネスに精通し、他部門を巻き込むことのできるプロジェクトマネジメントスキルを持つ人材です。DX推進において組織全体のビジョンと戦略を定め、PDCAを回す体制構築に寄与し、プロジェクトの管理を担います。

新たなビジネスの企画・立案者

新たなビジネスの企画・立案者は、顧客のニーズや市場のトレンドを理解し、イノベーティブなアイディアを生む戦略的思考を持つ人材です。DX戦略に沿って具体的な施策を考案し、目標や課題をクリアする新規ビジネスや商品・サービスを創出します。

デジタル技術に精通している者

デジタル技術に精通している者は、最新のテクノロジーや技術的なトレンドを理解し、活用できるITスキルを備える人材です。ICT活用やインフラ構築などDX戦略の基盤となるシステムの導入・開発し、企業のデジタル化を推進します。

UIUXに係るシステムデザインの担当者

UI(ユーザーインターフェース)・UX(ユーザーエクスペリエンス)に関するシステムデザインの担当者は、ユーザーが求めるシステムのニーズを理解し、デザインに反映させる能力を持つ人材です。ユーザー目線で使いやすいインターフェイスやデザインを設計することで、満足度や体験価値を高めます。

AI・データ解析の専門家

AIおよびデータ解析の専門家は、機械学習やデータサイエンスの知識を、自社のビジネスに有効活用できる人材です。AIの導入によって商品・サービスに付加価値を与えたり、ビッグデータの分析によって有益な情報を抽出したりするなど、イノベーションの創出を促します。

求められるDX人材の職種

DX人材が担う職種は多種多様ですが、IPAの資料では必要な人材として以下の7職種を定義しています。各職種の担う業務と役割についても解説します。

DXに対応する人材

職種 定義
プロダクトマネージャー DXやデジタルビジネスの実現を主導するリーダー格の人材
ビジネスデザイナー DXやデジタルビジネス(マーケティング含む)の企画・立案・推進等を担う人材
テックリード(エンジニアリングマネージャー、アーキテクト) DXやデジタルビジネスに関するシステムの設計から実装ができる人材
データサイエンティスト 事業・業務に精通したデータ解析・分析ができる人材
先端技術エンジニア 機械学習、ブロックチェーンなどの先進的なデジタル技術を担う人材
UI/UXデザイナー DXやデジタルビジネスに関するシステムのユーザー向けデザインを担当する人材
エンジニア・プログラマ システムの実装やインフラ構築・保守等を担う人材

プロダクトマネージャー

プロダクトマネージャーは、DX推進のリーダーです。ビジョンの策定から新商品・サービスの創出といった具体的な施策までを統括し、プロジェクトの管理を担います。他の6職種を取りまとめるため、豊富な知識が欠かせません。重要なポジションであり、管理職や事業のエース格などが任命される傾向にあります。

ビジネスデザイナー

ビジネスデザイナーは、DX推進の企画・立案者です。デジタル技術を活用した、新しいビジネスモデルや商品・サービスの創出を担います。一から事業を生み出すため、市場や顧客に対する深い知識や社内調整をこなす行動力など、ビジネスマンとしても高いスキルが必要となるのが特徴です。

テックリード(エンジニアリングマネージャー、アーキテクト)

テックリードは、システム設計から実装までを統括する技術チームのリーダーです。エンジニアを管理する「エンジニアリングマネージャー」や、システムの企画・設計を主とする「アーキテクト」の役割も含まれ、DXの基盤となるシステムの構築を牽引します。外部から経験者を中途で採用したり、技術に優れた社内エンジニアを登用したりするケースが多くなっています。

データサイエンティスト

データサイエンティストは、事業や業務に精通したデータの分析・解析者です。事業に役立つ情報を抽出して意思決定を支援するなど、データドリブンな経営を実現します。データの利活用には統計解析やITなど幅広い知識に加えて、自社のビジネスに対する深い理解も不可欠です。そのため、すでにビジネスに精通していて、データサイエンティストとして素養がある社員を育成したり、新たにデータサイエンティストの職種を募集したりするケースも少なくありません。

先端技術エンジニア

先端技術エンジニアは、AIやブロックチェーンなど先進的なテクノロジーを活用する技術者です。新しい技術を自社のビジネスモデルや商品・サービスに導入することで、競合優位性を確立します。先端技術は新しいものが出てくるため、外部専門家との連携で補完する企業も少なくありません。その場合には社内の先端技術エンジニアに、外部との協働を円滑化するコミュニケーションスキルや管理能力などが求められます。

UI/UXデザイナー

UI/UXデザイナーは、UIとUXの設計・改善を行うデザイナーです。インターフェイスの直感的な操作性や自社のブランディングにあったデザインなどを手掛け、商品・サービスなどの体験価値の向上を図ります。外注で対応する企業も多いですが、自社で開発チームを有している企業では適任者を採用するケースが見かけられます。

エンジニア・プログラマ

エンジニア・プログラマは、システム実装やインフラ構築、それらの保守管理などを行う技術者です。ソフトウェアの開発によって事業の効率化や生産性の向上を実現し、デジタル技術による変革を促します。企業が自社で管理し、開発のみ外注して保守管理を社内で行うケースも存在します。

DX人材を獲得する方法

DX人材を獲得する方法を3つ紹介します。企業の状況や職種の特徴を考慮しながら、最適な方法を組みあわせることで、DX人材を効果的に獲得することができるはずです。

DX人材の新規・中途採用

DX人材の新規・中途採用は、獲得したい職種を募集して獲得する方法です。オファーやエージェントなどの人材サービスを活用することで、能動的に優秀な人材にアプローチすることができます。社内に新しいスキルやノウハウを持ち込み、企業の変革を促してくれることが新規・中途採用のメリットです。

新規採用の場合、DX業務の経験者がほとんどいないため、IT技術を学んだ新卒学生が主な対象でしょう。そうなると、現在のスキルよりもDX人材としてのポテンシャルを見極めることが大切です。対して中途採用であれば即戦力も期待できます。獲得したい職種と任せたい業務内容を明確にすることがポイントです。ただし、優秀なDX人材は他企業から見ても魅力的であるため、相応の条件を用意しないと獲得は難しいかもしれません。

DX人材の社内育成

DX人材の社内育成は、既存の社員にDXに関連したスキルや知識を身につけさせる方法です。社内研修やプロジェクトでのOJTなどを通じてスキルアップを図ります。

社内育成が成功すれば、企業は外部からの人材獲得に依存せずにDXを推進できるようになります。既存の社員であれば自社の事業に精通しているため、理念やブランディングに即したDXを実現できる可能性が高くなるでしょう。DX体制を構築しやすく、既存事業に即しながらDXを推進できるのもメリットです。

外部パートナーの活用

外部パートナーの活用は、DX推進に必要な知識やリソースを外部の企業やコンサルタントから得る方法です。専門性が高いスキルや社内での経験が不足している領域は、外注したほうがスピーディーで効率的となるケースもあります。必要となるDX人材を臨機応変に補充できるのもメリットです。

さらに、外部パートナーとの協業を通じ、新たなノウハウを獲得したり、DX人材の社内育成を促進したりする効果も見込まれます。一方で、外部に依存しすぎると、理念との乖離やコストの増加、システムの一貫性の欠如などを招きかねません予算と現在のビジネス状況を考慮し、外部パートナーは、適切に活用することが重要です。

DX人材の育成方法

最後に、DX人材の育成方法を3つ紹介します。社内育成はDX人材を着実に内部で確保できるため、積極的に取り組むと良いでしょう。

社内・社外研修の充実

セミナーやイベントなどの社内外の研修プログラムの充実は、DX人材の育成において重要です。社内研修では、デジタル技術やデータ分析、プロジェクト管理など、DXに必要なスキルを体系的に学ぶプログラムを実施すると良いでしょう。一方で、社外研修ではセミナーやイベントの参加から、最新のトレンドや異業種での成功事例にふれ、新たな知見を得る機会があるといいかもしれません。

DXに関する研修によって、社内のDX人材を増加させた企業の成功事例も少なくありません。社内・社外研修の整備は「DX人材を安定的に確保する仕組みづくり」といっても過言ではないのです。

資格取得の推奨・補助

DXに関連した資格取得の推奨・補助は、人材育成に有効な手段です。資格取得によって社員のスキルレベルを客観的に示す指標となるため、効果測定をしやすいのがメリットです。

また、企業が資格取得のための学習支援や試験費用の補助を行うことで、社員の学習意欲を高め、DXに対する理解と能力を深めることができます。とりわけAIやデータサイエンスなど注目が集まるデジタル技術の習得は、社員にとってもキャリアアップのチャンスです。社内のモチベーション向上にも効果的でしょう。

社内の配置転換

社内での配置転換も、DX人材を育成する上で効果的です。異なる部門やプロジェクトへの配置転換を行うことで、社員に多様な業務を経験させることができます。特に、デジタル化が進んだ部門への参加や新規プロジェクトに携わることは、DXに関する知見を得たり、スキルを深めたりする絶好の機会となるでしょう。

DX推進は他社に先んじて取り組むことが肝心ですが、どの方法にせよDX人材の育成には時間を要します。そこでおすすめしたいのが、DXツール導入によるスモールスタートです。例えば業務のデジタル化を支援する「Hirameki 7」を活用すれば、無理なく、DX推進を担う人材の育成に取り組むことができます。

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DX人材の確保と育成について今から考えよう

DX人材は今後も需要が高まり続け、社内で確保するハードルもますます高くなると予測されます。だからといって、すべてを外注で対応すると、コストの増加やスピード感の欠如を招きかねません。

より効率的にDXを進めたいなら、DX人材を内部で確保するのがベストでしょう。そのためには、今からDX人材の採用・育成に取り組むことが大切です。DXツールなどを活用しながら、自社の人事戦略に取り組んでみてください

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