企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の重要性がますます高まる中、注目を集めているのが「社内DX」です。ただ、言葉自体は知っているものの、「どういった取り組みを指すのか」「何をすべきなのか」という具体的な取り組みが理解されていないことも少なくありません。
そこでこの記事は、社内DXの定義や必要性を説明するとともに、具体例や推進方法、注意点、成功事例を紹介します。
目次
社内DXとは社内業務に限定したDXのこと
社内DXとは、「社内業務に限定したDX」を表す造語です。そもそも企業のDXは「デジタル技術によって業務やビジネスモデル、組織などを変革し、競争優位性を確立すること」を意味します。つまり社内DXとは、デジタル技術を活用して、社内の業務や働き方を変革していく取り組みです。
その定義を当てはめて、社外DXはデジタル技術を活用して、顧客や取引先など社外の関係者との働き方を変革することを示すのが一般的です。
取り組みとして、生産性向上やコスト削減を目指す規模感の小さいDX推進が多いのが特徴です。
社内DXの必要性
まずは社内DXの必要性について解説します。多くの企業が取り組む主な理由は、下記の2つです。
競争力強化
社内DXが必要な理由のひとつとして、競争力強化が挙げられます。変化する顧客ニーズに対応するには、DX実現への取り組みが不可欠です。一方で、競合企業もDXに取り組むため、さらなる競争の激化も予測されます。
マーケットやビジネス環境が過酷になる中で、自社が生き残るには付加価値の創出が不可欠となるでしょう。社内DXにより、新しいビジネスモデルやサービスの開発が促進され、企業が新しい市場を開拓する機会が増加します。イノベーションを引き起こす全体的なDXを実現するには、社内DX推進によって競争力を高めながら、自社を変革につなげることが肝心です。
働き方改革
働き方改革も、社内DXが必要とされる理由です。従業員のワークライフバランスを整えながら、少子高齢化による人手不足を解決するには、社内DXの推進は欠かせません。
業務のDX化を図れば、業務効率化による省人化が可能となり、テレワークやフレックスタイム制度など多様な働き方にも対応できます。また、社内DXによって職場環境が改善されれば、人材確保にも有利になるため、人手不足の解消にも直結します。
社内DXの具体的な取り組み
社内DXを実現するには、実際にどのようなことを行えばいいのでしょうか。ここでは社内DXの具体的な取り組みを6つ紹介します。あわせて施策の効果も解説しますので、自社での取り組みの参考にしてください。
テレワークの推進
社内DXの代表的な取り組みとして、テレワークの推進が挙げられます。パソコンやスマートフォンを配布し、ビデオ会議ツールやチャットツールなど社内インフラを整備すれば、場所を問わずに働くことが可能です。また、通勤時間が短縮されることで、従業員の負担が減って生産性が高まります。また、育児・介護などで十分に働くことができなかった人材や、地方に住む優秀な人材などを獲得できるようになるのも利点です。
社内マニュアルや資料の電子化
社内マニュアルや資料の電子化も、社内DXにおける取り組みのひとつです。社内マニュアルや資料を電子化することで情報更新や保管・整理が容易となり、紙代やインク代などのコストも削減できます。オンラインストレージを活用することで、情報の共有が迅速に行えるようになり、業務効率も向上するでしょう。また、資料の検索性が向上するため、新入社員の教育や研修の効率化も図ることができます。
電子契約システムの導入
電子契約システムの導入も、多くの企業が取り組む社内DXの一例です。契約書の作成から保管までのプロセスをネット上で完結できるため、契約業務を効率化できます。契約書を送付する時間や、書類を印刷してそろえる手間を減らすことも可能です。ペーパーレス化によってコストも削減でき、人的ミスも抑制できます。
データベースや管理システムの整備
社内DXの取り組みのひとつとして、データベースや管理システムの整備も挙げられます。例えば、経営管理システムなら情報の一元管理によって精緻な事業計画を立案でき、意思決定も迅速化できます。また、CRM(顧客管理システム)を導入すれば、リアルタイムで情報共有ができるようになるので、既存顧客へのフォローアップや見込み顧客のナーチャリングも可能です。データベースや管理システムを整備することで、業務効率の向上だけでなく、新たなビジネスチャンスを掴むための基盤を強化できるでしょう。
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールなどの導入
RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールなどの導入も、社内DXを推進するのに効果的です。RPAツールとは、ロボットなどによって業務の一部を自動化できるツールです。例えば、手作業によるデータ入力業務、請求書やレポート、シフトなどの作成に活用できます。ルーティン業務を自動化し、より戦略的な業務に従業員の時間と労力を割り当てることが可能になります。
データの利活用
社内DXの中でも大きな効果を期待できるのが、データの利活用です。業務のデジタル化が進むと、社内にデータが蓄積され、経営判断に必要なデータが可視化されます。可視化によってデータドリブンな経営が可能になり、市場変化の早期把握や商品開発の精度向上、コストの最適配分やマーケティングの最大化など、多方面にわたる効果が見込まれるでしょう。
社内DXを効率的に推進する方法
社内DXの推進方法を5つ紹介します。いずれも社内DXを効率的に推進するためのポイントとなりますので、覚えておくと良いでしょう。
経営層のコミットメントを得る
経営層のコミットメントを得ることは、社内DXの大前提です。経営層の理解がない状態で、組織全体に関わる社内DXを推進するのは現実的でありません。複数部門と協働したり、十分な予算を確保したりすることも、経営層のコミットメントがないと難しいでしょう。経営層がプロジェクトに参加し、強いリーダーシップを発揮することはDX成功の条件といえます。
ビジョンと目標を策定する
明確なビジョンと目標を策定することは、社内DXの実現の出発点です。ゴールが不明瞭では社内DXの実現は困難です。まずは「何のために取り組むのか」を議論し、実現したいビジョンを明確化しましょう。さらに、PDCAを回せるような具体的な目標を設定することも欠かせません。そして、策定したビジョンと目標を組織全体で共有し、浸透させることも重要です。
DX人材を育成する
ビジョンと目標の策定と同時に行いたいのは、DX人材の育成です。社内DXでは、デジタル技術を活用して組織や働き方を一新するため、自社に詳しい人材が必要です。そのため、社内でのDX人材の育成が欠かせません。
DX人材の育成には大きく分けて2つのアプローチがあります。1つは従業員のデジタルスキルを高めること、もう1つは新たに獲得したデジタルスキルのある人材に自社の業務を深く理解してもらうことです。どちらの方法が良いか、状況に応じて選択しましょう。
社内の制度・ルールを整備する
社内DXの実施には、適切な制度とルールの整備が不可欠です。デジタルツールを導入しても、それを支える制度が整っていなければ、混乱を引き起こす恐れがあります。そのため、社内DXに着手する前には、現行のシステムや業務プロセスを見直し、課題を明確にすることが重要です。課題が明確になったら、社内DXのビジョンや目標と照らしあわせながら、制度やルールなど詳細を決めていきます。
自社に適したツールを導入する
社内の制度・ルールの整備とあわせて、自社に適したデジタルツールの導入も進めます。ツールを選ぶときは、必要な機能を持っているか、また予算や会社の規模にあっているかを検討してください。このプロセスにおいては、IT担当者や現場の従業員から意見を聞くことも大切です。適切なツールを導入し、運用できなければ、業務の効率化や時間の節約といった目的を達成することは難しいでしょう。
業務の効率化についてもっと詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
社内DXの注意点
社内DXを成功させるためには、以下の3つの注意点を徹底することが重要です。これにより、社内DXが中断するリスクを最小限に抑えることができます。
単なるデジタル化にならない
社内DXは、ただ単にデジタル化することが目的ではありません。組織や働き方を変革し、その先にある企業全体のDXを実現することが最終目標となります。社内DXは、企業全体の変革への第一歩と捉え、一時的な成果だけでなく、長期的なビジョンに焦点をあわせることが重要です。
例えば、紙の書類をスキャンしてデジタルファイルに変換するだけでは、単なるデジタル化に過ぎず、業務プロセスそのものは変わりません。その後デジタル化されたデータをクラウドサービスに保存し従業員が迅速かつ安全にアクセスできるようにすることで、作業効率が向上します。
さらにデジタルデータを利用して、承認プロセスやデータ入力作業を自動化すると、手作業の負担やミスを減少させることができます。このように、単なるデジタル化に留まらず、デジタルデータを活用して業務プロセスを最適化し、新たな価値を創出することがDXの本質です。
DXに取り組む社内文化を醸成する必要がある
DXに取り組む社内文化を醸成する必要があることも、社内DXを推進する上での注意点です。社内DXは全社的な取り組みなので、各部門との調整も求められます。また、既存の業務プロセスの変更に対する従業員の抵抗も考慮する必要があります。中長期にわたって社内DXを継続するには、従業員一人ひとりの理解を促し、当事者としてDXに取り組む社内文化が必要です。
スモールスタートからはじめる
社内DXは、スモールスタートが鉄則です。システム開発やデジタルツール導入には相応の投資が必要で、デジタル人材の獲得・育成は時間を要します。また、業務プロセスの更新は、従業員にとって負担になることがあります。そのため、社内DXを無理なく推進するには、ペーパーレス化や情報管理のクラウド化など、低コスト・低リソースで実現できるデジタル化から段階的に取り組むのが成功のカギです。
社内DXの成功事例
社内DXの成功事例を3つ紹介します。それぞれから学べるポイントがありますので、自社で社内DXに取り組む際のヒントとしてください。
株式会社KDDI
電気通信事業を展開するKDDIでは、働き方改革を目指し、デジタル技術を活用した環境整備に取り組みました。クラウド会議システムの拡充や会議室のIT化、新オフィスの設置など環境を整えながら、テレワークやフレックスタイム制度などを導入したのです。
これによって従業員のワークライフバランスが向上するだけでなく、仕事と家庭を両立する「時間主権の確立」も図りました。加えて、勤務時間の内訳やメール数など従業員の働き方データを収集・可視化することで、さらなる従業員満足度(エンゲージメント)の向上も模索しています。
株式会社オートプロニーズちくご
小売業を営む株式会社オートプロニーズちくごは、社内コミュニケーションの活性化を目標に、社内DXを推進しました。社内アンケートで課題に挙げられた「情報伝達の満足度」を高めるため、チャット形式の社内コミュニケーションツールを導入したのです。
このツール導入により、業務の効率が格段に向上し、従業員の満足度も高まりました。導入が成功した要因には、制約事項や要求仕様を明確にした上で使用例まで想定したことが挙げられます。
株式会社ソロン
不動産代理業・仲介業を手掛ける株式会社ソロンは、業務のデジタル化やデータの利活用による企業変革に着手しています。同社の取り組みでユニークなのは、業務アプリを作成できるクラウドサービスを基盤システムとした点です。さまざまなアプリを自社で開発し、営業活動や社内申請がスムーズに進むようになりました。
ツールの一元化によってほかのシステム使用料を削減できただけでなく、複数部署にまたがる業務の進捗管理が容易になりました。加えて、現場からのフィードバックを即時に反映できるようになったことで、現場が求める業務管理体系が構築できたのです。結果的に顧客コミュニケーションの量と質が向上し、事業拡大につながりました。
- 経済産業省「DXセレクション2023」
自社にあったDX推進が重要
社内DXの推進には、自社にあった方法を見いだすことが重要です。特に、大規模な投資が難しい中小企業には、多機能で導入しやすい「DXツール」を利用したスモールスタートをおすすめします。
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