DX戦略とは? 戦略策定の進め方やポイント、成功事例を解説

現在では大手・中小を問わず多くの企業が、DX(デジタルトランスフォーメーション)戦略に取り組んでいますが、なかには「どのように戦略を立案すべきか分からない」と悩む経営者やリーダー層も少なくないでしょう。

この記事では、DX戦略の概要や策定すべき理由といった基本的な知識から、戦略策定の具体的な手順やポイントまでを解説します。あわせて大手企業の成功事例も紹介するので、自社のDX戦略を策定する上でのヒントとしてご活用ください。

目次

DX戦略とは?

DX戦略とは、「デジタル化によって企業を変革する施策、および長期的な経営計画」のことです。総務省※は、DXを「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

つまり、DXはデジタル化による生産性向上にとどまらず、企業の変革による競合優位性を築くことが目標となります。ビジネス全体を抜本的に変えるDXを実現するためには、経営戦略に紐づいた計画が欠かせないのです。

DXについてもっと詳しく知りたい方は、下記記事をご覧ください。

DXとは?言葉の意味と求められる理由について分かりやすく解説
DXとは?言葉の意味と求められる理由について分かりやすく解説

DX戦略を策定する理由

DX戦略を策定する理由としては、持続的な企業の価値向上が求めていることが挙げられます。デジタル企業の新規参入や先端技術の開発などによって、市場の変化は従来とは比べ物にならないほど速くなりました。加えて、デジタル化に取り組む企業も増えており、他社との差別化も容易ではなくなってきています。そのような激変する外部環境の中で企業が生き残っていくには、DXによる競争力向上や価値創出が欠かせません

そのうえ、DXは企業の根底を変える取り組みであるため、全社が一丸となる戦略の策定が求められます。長期的な目線を持ちながら各組織が協働していくには、全社共通のビジョンや目標設定が不可欠となるでしょう。

DX戦略策定の進め方

DX戦略策定は、大きく4つのステップに分けられます。

DX戦略策定の4つのステップ>

  1. DX戦略のビジョンを定義する
  2. 自社の現状分析をする
  3. DX戦略の設計を進める
  4. DXの実行計画の策定をする

DXは企業全体に及ぶ取り組みであるため、一つひとつ要件を整理し、社内でのコンセンサス(合意)をとりながら戦略を練ることが大切です。それぞれで行われる要件定義や合意形成が不十分だと、施策の失敗やトラブルの要因となるので、注意しましょう。

DX戦略のビジョンを定義する

まずは、DX戦略のビジョンを定義します。どのような目的で、どういった目標を達成したいのかを明確化していきましょう。この段階では抽象的でも問題ありませんが、企業理念や提供価値、経営戦略と結びついたビジョンでなければいけません。

また、ビジョンを定義する際はDX担当者だけでなく経営者や事業責任者を交え、自社の「あるべき姿」を決めることが重要です。DXでは組織間の調整が求められるだけでなく、場合によっては事業・組織の再編や統廃合といった決断も要します。

全社横断での理解を得て、事業に影響を及ぼす施策をスムーズに講ずるためには、トップダウン形式でなければ難しいでしょう。だからこそ、経営者や事業責任者が具体的なビジョンを提示することは不可欠です。

自社の現状分析をする

ビジョンを定義できたら、次に自社の現状を分析します。保有するデジタル技術や既存システムを見直し、現場が抱える事業・業務の課題も調査しましょう。もちろん、自社のビジネスモデルや提供価値を見つめ直すことも欠かせません。自社の弱みと強みを把握することで、DXを推進するべき事業領域と業務課題が明確になります

現状分析をする際は「推進ステップ」に沿って進めていくと良いでしょう。業務の変革度合いを3段階に分類しており、第1段階はアナログデータをデジタル化する「デジタイゼーション」、第2段階は個別の業務・製造プロセスをデジタル化する「デジタライゼーション」、第3段階は企業全体の業務・製造プロセスをデジタル化する「デジタルトランスフォーメーション」と定義しています。

各業務・事業を推進ステップに当てはめて整理することで、DXの進捗が可視化されます。進捗の遅れている部分が明白になれば、施策の優先順位もつけやすくなります。

DX戦略の設計を進める

自社の現状分析が完了したら、DX戦略を具体的に設計していきます。洗い出した自社の強みと弱みを照らし合わせながら、ビジョンの実現に必要な施策を策定しましょう。生産性向上やコスト削減など短期的な利益にとらわれず、企業の変革につながる取り組みを企画します。

肝心なのは各施策の目標は客観的な効果測定を行うために、定量データで設定することです。例えば、ワークフローのペーパーレス化を行うなら「フローのデジタル化率」や「ペーパーレス化で削減された工数」などを目標に設定すると良いでしょう。

同時に、組織体制の見直しを行い、各施策を実行するのに適切なチーム編成となっているかも検証してください。DXに必要な知識を有するメンバーをアサインするだけでなく、IT分野の人材を新たに獲得することや、外部からの専門家を迎え入れるなどの選択肢も含めて検討することが大切です。

DXの実行計画の策定をする

具体的な施策が決まったら、最後にDX戦略の実行計画を策定します。重要な取り組みであるといっても、DXに割けるリソースや予算には限りがあるでしょう。限られた経営資源の中で効率的にDXを推進するには、ビジョン達成に至るまでのロードマップ作成が求められます

ロードマップ作成にあたっては、各組織との調整が必須となります。中長期的な取り組みとなるDXでは、各組織との協力体制を構築することが戦略の遂行には欠かせません。また、DXにはシステム導入など少なくないコストが必要になるため、予算確保の観点でも無理のない計画立案が求められます

そういった背景から、DX戦略はスモールスタートが推奨されます。特定の業務のデジタイゼーションから始めて、徐々に範囲を拡大していくことで、DXにかかるコストや負荷を軽減できるでしょう。

DX戦略策定のポイント

DX戦略策定のポイントを、3つ紹介します。いずれもDX戦略をスムーズに進めるキーとなります。DX戦略の設計を進める際には意識的にも盛り込んでいくと良いでしょう。

データの一元化と情報共有の最適化

DX戦略策定では、データの一元化と情報共有の最適化がポイントとなります。まずは紙で取りまとめられていた情報や、社内に散らばっているデジタルファイルを集約しましょう。例えば、クラウド上にデータを保管・管理すれば、誰もが情報を容易に取得できるようになり、データ共有や社内コミュニケーションが円滑化されます。

データ連携できるシステムの構築も、有効です。社内に蓄積されたデータを紐づけた横断分析することができれば、より高度な効率化や的確な経営判断が可能になります。

技術・知見・ノウハウの統合

技術・知見・ノウハウの統合は、DX戦略策定において重要です。企画や営業など各部署からの意見、培ってきた技術、事業に対する知見やノウハウを集約することで、企業の変革に求められる多角的な視点やアイディアが得られます

ビジョン定義や戦略策定はトップダウンが適していますが、施策の立案はボトムアップでのアプローチが効果的です。そのためには各組織がDXを「自分ゴト化」できるビジョンを提示し、部署間の連携を促す仕組みや組織の壁をこえた体制を築きましょう

ビジネスモデルの再設計と新しい価値の創出

DXは企業の変革が目的であるため、ビジネスモデルの再設計と新しい価値の創出を常に意識しましょう。もちろん、生産性向上やコスト削減など短期的な利益は大切です。しかし、デジタル技術の進化や顧客ニーズの変化が激しい現代においては、大局的な視点を持ってデジタル技術を活用できなければ持続的な成長は望めません。

ビジネスモデルを時代にあわせて設計し直し、新しい価値を常に創出していくためには、企業全体の意識改革が不可欠です。社員一人ひとりが最新の情報やテクノロジーにふれ、社内外から知見やアイディアを募る風土を生み出すことがイノベーション創出のきっかけとなるでしょう。

DX戦略の成功事例

ここからは、大手企業によるDX戦略の成功事例を4つ紹介します。いずれも生産性の向上や付加価値の創出を実現した好例ですので、ぜひDX戦略策定のヒントとしてご活用ください。

事例1JR東日本(東日本旅客鉄道株式会社)

JR東日本では、DXによる地域活性化に取り組んでいます。その戦略は地方交通・観光・生活という3つの領域で成り立っており、多様な施策を各地域と協働しながら展開しました。

地方交通領域では、AI配車によって利用者のニーズに柔軟に対応する「オンデマンド交通」を可能にし、観光領域では独自のプラットフォームで検索・予約・決済をワンストップ化しています。さらに生活領域では駅にオンライン診療所や社会人向けのオンラインスクールを開設するなど、地域の情報拠点化を実現しました。

事例2:コニカミノルタ株式会社

コニカミノルタでは、ワークプレイス変革を掲げ、顧客への価値提供に成功しています。その代表となるのが「画像IoT技術」によるBtoBサービスでしょう。

「画像IoT技術」とは、自社の強みとなるセンサー技術と画像AI処理を融合させたプラットフォームです。例えば、小売業では商業施設に設置するカメラの映像から顧客属性を分析したり、食品加工業では冷蔵庫内の熱をカメラで検知して品質維持・向上を図ったりと、多様なソリューションを提供しています。

事例3:パナソニック株式会社

パナソニックでは、「お客さまサービス」と「事業オペレーション」の両面でDXを推進しています。

お客さまサービスでは、家電のIoTに取り組むだけでなく、送迎・訪問・配送業務を改善する自動配車・テレマティクスサービスを開発するなど、デジタル技術によって付加価値を見事に創出しました。

事業オペレーションでは、人事・総務に加えて設計から物流までをデジタル化し、各業務の最適化に成功しています。この取り組みにより、データを基にした経営判断の強化、部門間の連携を活かした調達力の向上、生産管理のプロセス標準化など、数多くの成果が得られています。

事例4:横浜市

横浜市では行政・地域・都市のDXを目指しており、特にスマートフォンからすべての行政手続きを行える環境づくりに注力しています。例えば、住民票の写しのオンライン請求や、市民利用施設のWeb予約システム再構築などを行いました。

他にも、消防団活動の報告事務をオンライン化したり、消防局と災害現場を映像でつなぐ「LIVE映像通信システム」を導入したり、地域活動の支援や災害対策のデジタル化も図りました。加えて、行政サービスの課題とその解決に役立つ民間のデジタル技術をマッチングするプラットフォームサイト「YOKOHAMA Hack!」の運用など、新たな価値の創出に向けた取り組みにも挑戦しています。

DX戦略のビジョンを定めることが重要

DX戦略の策定では、ビジョンを定めることが何よりも重要です。自社にはどのような変革が必要かを見極め、達成すべき目標を具体化することがDXの実現には欠かせません

ゴールさえ明確であれば、最初から事業を抜本的に変革するようなプロジェクトを推進する必要もなくなります。ペーパーレス化や承認フローのデジタル化などから着手し、自社の状況にあわせて計画的にスケールしていくことができるようになるでしょう。

スモールスタートをするなら、DXツールの活用が効果的です。例えば総合型DXツールの「Hirameki 7」ならDXに重要な7つの領域をワンツールで対応できます。低コストで着実に成果を上げていくことができるので、ぜひDX戦略の第一歩として検討してみてください。

無料で始められるDXツールHirameki 7については、こちらからご覧ください。

Hirameki 7の詳細はこちら  

Facebook X LINE