
BtoBマーケティングに関心を持つ方は、他の企業を対象とした商品やサービスの売上アップや新規顧客の獲得、商談数の増加といった具体的な成果を目指している場合が多いです。企業がBtoBマーケティングを適切に設計し実行することで、主な課題である顧客特定やニーズ把握、リードの創出・育成などを着実に解決できます。
この記事では、BtoBマーケティングの基本的な戦略や流れ、代表的な施策の特徴、BtoC(企業対個人)との違い、実際の事例や効果的な方法まで幅広く解説します。マーケティング活動の強化をご検討されている方はぜひご確認ください。
目次
BtoBマーケティングとは?
BtoB(Business to Business)マーケティングとは、企業間の取引におけるマーケティング活動のことを指します。主な目的は、リード(見込み客)を獲得し、そのリードを顧客へ育成し、最終的に商談や受注に結び付けていくことです。
BtoBマーケティングの実務では、複雑かつ長期的な商談が繰り返される傾向があります。そのため、関係性の構築と信頼の蓄積が大きな意味を持ち、戦略的なプランニングと多様な施策の実行が求められるのです。
BtoBとBtoCマーケティングの特徴の違い
BtoBマーケティングとBtoC(Business to Consumer)マーケティングは対象顧客が「企業」か「消費者」の違いにくわえ、以下のような特徴の違いがあります。
■購買の意思決定をする人数
BtoB:上長、決裁者など複数人
BtoC:1~2人
■購買までの期間
BtoB:長い
BtoC:短い
■購入の目的
BtoB:企業の利益、課題解決など
BtoC:利便性や満足度
■購入のサイクル
BtoB:長い
BtoC:短い
■判断基準
BtoB:合理性が重視
BtoC:感情も関与
BtoBマーケティングは、意思決定に多数の関係者が関与し、課題解決や業務改善という明確なニーズに基づきます。そのため、具体的な製品やサービスの特徴、導入効果、活用事例などの分かりやすい情報提供が重要です。
一方、BtoCは一般消費者向けのマーケティングで、購入決定はより短期間かつ個人の感情やブランドイメージが重視されます。小売店のセール、SNS広告による訴求、個人向けのアプリやWebサイトのキャンペーンなど、消費者の興味を喚起しやすい施策が多く用いられています。
BtoBでは具体的な業務支援やコスト削減などの合理的な訴求が求められるのに対し、BtoCは共感や楽しさといった感情的なアプローチが必要です。このように、ターゲットが異なれば効果的なマーケティング戦略や手法も大きく変わるため、自社製品やサービスの特性、顧客のニーズに合った方法を選定し、運用することが成果最大化のポイントとなります。
BtoBマーケティングの基本的な流れ

BtoBマーケティングは、まずデマンドジェネレーションというプロセスを通じて、購買意欲の高い見込み顧客を発見・育成し、営業部門に引き渡すまでの流れが基本となります。この活動には、テレアポやセミナー、展示会といった対面型の手法から、SEOやリスティング広告などのWeb施策まで、幅広い方法が組み合わされます。
獲得したリードには、メルマガ配信やセミナーの案内、ホワイトペーパーの提供などの多様なフォローを行い、それぞれの興味や購買意欲に応じて最適なコミュニケーションを設計することが大切です。こうして、リードをホットリード(高い受注確度を持つ顧客)へと育て、営業活動に繋げる仕組みが確立されます。この一連の流れにより、リード育成はもちろん、企業と顧客との長期的な関係構築にもつながります。
リードジェネレーション(顧客創出)
リードジェネレーション(顧客創出)とは、新しい見込み顧客(リード)を獲得するための起点となる活動です。代表的な施策には
- SNSマーケティング
- インターネット広告
- SEO(検索エンジン最適化)
- 営業メール
- 展示会
- セミナー
などがあります。
どの手法を採用する場合も、まず自社が求めるペルソナ像を明確に設定し、ターゲットとなるリード層に訴求する適切なコンテンツや情報を用意することが重要です。自社独自の強みや過去のリードジェネレーションの成果データを活用し、複合的なマーケティング施策を設計しましょう。
リード獲得に有効な各施策の詳細は以下記事で解説しておりますので、あわせてご確認ください。

リードナーチャリング(顧客育成)
リードナーチャリング(顧客育成)は、見込み顧客との継続的な接点を持つことによって育成し、興味・関心を高めてもらうためのマーケティング施策です。代表的な手法には、
- ステップメール
- オウンドメディア(自社サイトやブログ)
- ホワイトペーパー
- フォロー架電
などがあります。
リードごとに必要とされる情報や施策は異なるため、分析データに基づいたカスタマイズが不可欠です。適切な手法とコンテンツで、顧客の信頼を獲得し育成につなげていくことが、BtoBマーケティングの成果向上に役立ちます。
リードクオリフィケーション(顧客選別)
リードクオリフィケーション(顧客選別)は、ナーチャリングによって育成されたリードの中から、受注に結び付く可能性が高いホットリードを選定する段階です。

代表的な方法に、リードの各行動へ点数を付与する「スコアリング」があります。メール開封、資料ダウンロード、セミナー参加など、行動ごとにスコアを設定し、一定基準に達したリードを営業担当へ渡す形式です。
見込み顧客の属性や行動履歴を正確に判断し、自社製品やサービスへの関心や購入意欲が高い層を的確に選別することは、成約率や売上向上に直結します。リード選別の基準を明確にし、手法やツールを有効活用するようにしましょう。
商談・受注
ナーチャリングやクオリフィケーションを経て選別されたホットリードに対して、商談を実施し受注につなげます。営業担当は、これまでのリードの行動データや接点履歴、過去に開封したメルマガや参加したセミナーなどを詳細に把握することが大切です。この情報を元に、個々の顧客がどこで興味を持ち、製品やサービスのどの部分に魅力を感じたかを分析し、商談時の提案内容やトークへと反映させます。
また、リードが商品やサービスに抱く課題やニーズを事前に特定し、より適切で具体性のある提案を行うことが受注成功の鍵です。営業部門では複数の担当者と連携し、顧客の状況やニーズの変化にも柔軟に対応する姿勢も重要です。こうした流れのなかで、単なる売り込みではなく顧客の課題解決に寄り添うアプローチを重視することで、受注率最大化へとつながります。
顧客維持
BtoBビジネスのLTV(Life Time Value)※最大化には、顧客維持が重要な役割を担います。SaaS分野などでも、初回受注や単発購入だけでなく長期的な付き合いが重視されるため、企業は顧客との関係構築や満足度向上のためのマーケティングコンテンツやサポート体制の継続的な強化に取り組んでいる企業も多いです。
顧客満足度を定期的に数値・データで把握することで、改善ポイントや新たな課題発見につながり、リアルタイムの対応や関係性の進展が可能になります。例えば定期的なフォローアップや活用事例の共有、サポート窓口の充実などが挙げられます。顧客からのヒアリングやサービス強化を組織として意識し、優良顧客の満足度を維持・向上させていくことがBtoBの基礎です。
- LTV:顧客生涯価値のことで、1人の顧客が一定の取引期間中に企業にもたらす利益の総額を指します
BtoBマーケティングの代表的な施策
BtoBマーケティングでは、目的やペルソナ、予算にあわせて最適な施策を選定することが成果に直結します。リード獲得・育成という2つの軸を意識しながら、多くの企業が戦略的に手法を組み合わせて運用しています。以下代表的な施策の特徴を理解しつつ、自社の課題に適した施策選びを行いましょう。
リードジェネレーションの施策例
リードジェネレーションでは、主に新規顧客(見込み顧客)の情報を獲得するための施策を実施します。
■リスティング広告
検索時に自社サービスや製品を直接訴求できるため、関心度の高いリードを効率的に集めたい場合に有効です。
ただし競合も対策していることが多く、広告費が高騰しやすいため注意が必要です。
■ディスプレイ広告
ブランド認知を拡大しつつ、ターゲティング機能を活用して商談機会を増やすことができます。
リスティング広告に比べコンバージョン率は低くなりますが、単価は安い傾向にあるため、あわせて配信を行うのがおすすめです。
■SNS広告
LinkedInやFacebookなどビジネス向けのSNSを活用することで、BtoB商材に興味を持つ層へダイレクトに接点を持てます。興味関心に基づいて広告を配信できるので、リード獲得の見込みが高いユーザーにアプローチすることが可能です。
継続的に接点を持つためにも、広告配信だけではなくSNS運用もあわせて行うのがおすすめです。
■ホワイトペーパー
課題解決の資料やノウハウを提供し、資料ダウンロードとともにリード情報を獲得します。
お問い合わせや見積もり依頼に比べ、アクションのハードルが低いため、潜在顧客の獲得施策に最適です。
ホワイトペーパーに関しては、以下記事で詳細を解説しているのであわせてご確認ください。

■SEO
自社でWebメディアを運営し、そこから「サービス資料」や「お役立ちコンテンツ」などの資料ダウンロードに誘導することで、リードを獲得する手法です。
成果が出始めるまでに時間がかかりますが、上位表示されてからは費用をかけずに継続的にリードの獲得が見込めます。
■プレスリリース
新サービスや製品リリースを幅広く掲載し、ニュースサイト経由で興味層からのアプローチを得ます。
対象となるのはあくまで「新サービス」や「新機能が追加」された場合など、公開していない情報のみが対象になるため、注意が必要です。
■セミナーやウェビナー
ターゲット層がかかえる悩み・課題に関連したセミナーを実施することで、リード獲得につなげる手法です。
セミナーの集客方法については以下で解説しているので、あわせてご確認ください。

■展示会
展示会への出展は、規模にもよりますが一度に多くの人にアプローチできる施策のひとつです。
ただし一度に多くのブースを回っているケースが大半なので、展示会後のアプローチ方法に工夫が必要です。
幅広い施策を組み合わせることで、事例やケースに応じた最適な顧客獲得が可能になります。社内調査や競合分析を実施し、自社の強みに合った広告やコンテンツ選定を忘れないようにしましょう。
リードナーチャリングの施策例
リードナーチャリングでは、獲得した見込み顧客へ継続的にアプローチを行い、成約へと育て上げる支援が中心で、以下が具体的な施策例です。
■メルマガ配信
獲得したリードに対して、継続的にメールを配信することで、接点を増やし商談・顧客化を狙う手法です。リードに対して同じ内容を送るのではなく、ニーズや過去の行動履歴を基にセグメント化したうえで、パーソナライズされたメッセージを送ることが大切です。
BtoBにおけるメルマガ配信のコツは以下記事で解説しているのであわせてご確認ください。

■セミナーやウェビナー
セミナーやウェビナーの実施は、リードジェネレーションだけではなくナーチャリングとしても効果的な施策です。
ユーザーにとって有益な情報を発信し、信頼性の向上や興味関心を深めましょう。集客する際は、前述したメルマガ配信の活用がおすすめです。
■MAツールの導入
MA(マーケティングオートメーション)ツールとは、企業のマーケティング活動を自動化・効率化することができるツールです。MAを導入することで、リード管理やメール配信を自動化し、一人ひとりの興味・行動に合わせた最適な情報を提供でき、成果の最大化につながります。
顧客のタイミングや状況を見極め、知識を蓄積しつつ、施策の効果をデータで分析しながら最適な育成施策を選ぶ姿勢が欠かせません。
BtoBマーケティングを実施する際のポイント
BtoBマーケティングを効果的に進めるためには、単に施策を実行するだけでなく、事前の戦略設計や関係部門との連携、状況に応じた継続的な分析と改善が不可欠です。
市場ニーズや競合環境、顧客の課題を特定し、自社の現状と強みを正確に把握することで、最適なマーケティング施策が立案できます。施策を実行した後も、成果や課題の検証を通して方針の微修正を繰り返し、常にマーケティング活動全体の質をアップデートしていく姿勢が重要です。各部門が連携しながら企業全体で施策の最大化を目指しましょう。
市場環境の調査・分析を行う
前述したように、事前の戦略設計はとても重要です。市場環境の調査・分析を行い、顧客ニーズや自社の現状や強みを正確に把握できるようにしましょう。
BtoBマーケティングにおける市場環境調査・分析の対象は、市場、顧客、自社、競合の4つに分けられます。市場を知るには、自社の製品やサービスが参入する領域の規模や特徴、成長性を分析し、顧客については彼らが抱える課題や情報収集の方法、購買のための社内プロセスを理解することが不可欠です。
顧客のニーズ特定やコミュニケーション戦略を設計する際は、自社の営業や履歴データ・過去の施策も分析し、どの点に改善余地があるか明らかにしておくと戦略設計で役立ちます。また、LTVが高い顧客セグメントを見極めると、戦略の自由度や投下資源の最適化につながります。競合環境の理解も怠らず、他社のマーケティング活動や施策事例も調査し、自社のポジションを明確にすることが成果向上のポイントです。
施策は実施して終わらずに分析・改善を図る
マーケティング施策を実行する際は、コンテンツの内容やプロモーション方法を細かく設計し、実施後はデータの収集・分析を行い課題や成功ポイントを抽出しましょう。成果が思うように上がらない場合は、新たな資料やツール、事例を参考に継続的な改善を行うことが大切です。戦略的な視点を持ち、各施策がビジネスにどのように影響しているかを検証するようにしましょう。
営業やマーケティングなど部門間の連携を大切にする
BtoBマーケティングで成果を大きく左右するのは、マーケティング、営業、カスタマーサクセスなど部門間の連携です。リード獲得から受注・継続利用まで、一貫したコミュニケーションや情報共有が求められます。
部門ごとに業務プロセスが独立している組織では、せっかく獲得したリードが受注や顧客化まで管理されず、課題が見えにくくなることがあります。営業部門と連携し、受注数やLTVに繋がるリードの特性や施策効果を明確にすることで、広告やコンテンツの改善にもつなげるようにしましょう。
全社的な支援体制や共有ツールを設計し、施策データや成功ポイントを適切に管理することが、顧客満足と持続的な売上のアップに役立ちます。
まとめ|BtoBマーケティングで成果を最大化するためのポイント
BtoBマーケティングで最大成果を得るには、自社の強みや顧客ニーズを的確に把握し、それぞれの段階に適した施策を実行することが要です。分析、リードジェネレーション、ナーチャリング、クオリフィケーション、商談、顧客維持といった一連のプロセスを有機的に連携させることで、効果的な新規顧客獲得から継続取引の維持まで実現できます。
また、全社的な連携・情報共有が施策のPDCAを加速させ、市場環境や顧客動向の変化にも迅速に対応できます。それぞれの施策やツールがもたらす成果を常に検証し、改善を繰り返していくことが成果最大化には不可欠です。
今後自社でBtoBマーケティングに取り組む方は、本記事でご紹介した流れや考え方を実践することから始めるのがおすすめです。まずは現状の分析や体制づくりから着手し、小さな改善を積み重ねてさらなるビジネス成長を目指しましょう。