DX推進の目的とは?必要性と具体例を解説

DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進において、目的を明確に設定することは非常に重要です。しかし、何を目的とすれば良いのか悩む経営者やDX担当者もいるでしょう。明確な目的がなければ、デジタル技術の導入は方向性を見失い、効果的な成果を生み出すことが難しくなります。

そこで今回は、DX推進の主要な目的や、目的を明確に設定する必要性を解説します。あわせて、DX推進のための初期ステップや具体的な目的例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

目次

DXの主要な目的

DXの主要な目的は、「企業の競争優位性を確立すること」です。競争上の優位性とは、市場において競合他社よりも有利なポジションを確保することを指します。その実現には、他社がまねできない独自性や他社を圧倒する強みが欠かせません

現代において競争上の優位性を得るには、デジタルデータやデジタル技術によるイノベーションが不可欠でしょう。つまり、DX推進の目的を達成するには、デジタル技術などを活用して市場の変化に素早く適応し、製品・サービスやビジネスモデル、企業文化・風土などの変革が必要なのです。

そのためには、データを効率的に活用できるシステムへの移行や、業務プロセスの見直しが課題となります。経済産業省の「DXレポート」では、煩雑化した既存システムを使い続けた場合、DXが実現できず、2025年以降に多大な経済損失が生まれると警鐘を鳴らしました。この「2025年の崖」問題を回避することもDXが求められる理由なのです。

DX推進における明確な目的の必要性

DX推進には、明確な目的が必要です。DXは競争優位性の確立を目指しますが、行動に移すには内容が漠然としています。そのため、DXの目的を自社に落とし込んで具体化することが重要なのです。

当然、明確な目的があれば効果的なDX戦略が立てられるので、リソースを集中的に配分し戦略を効率的に推進することもできます。1つの目標に向かって組織が一丸となるなど、ポジティブな効果が生まれるのも利点でしょう。

なお、DXの目的は、経営層や事業責任者に意思決定してもらうことが大切です。DXは企業全体で取り組む課題であり、企業の経営戦略と密接に結びついています。そのため、経営層などがリーダーシップを発揮し、目的を定め、企業全体に周知することが必要です。

DX推進のための初期ステップ

DX推進のための初期ステップを解説します。この初期ステップは、DX推進の「土台づくり」にあたり、DXの成功を左右する重要な取り組みです。決して妥協せず、自社にとっての最適解を模索しましょう。

ビジョンと目的の設定

DX推進の最初のステップは、明確なビジョンと目的の設定です。まずはDXによって実現したい企業のビジョンを定義しましょう。経営者や事業責任者を交え、企業理念や提供価値と結びついたビジョンを決めていきます。

自社のあるべき姿を決めたら、企業のビジョンに紐づいたDXの目的を具体化しましょう。デジタル技術をどのように活用し、ビジネスを成長させるかを定義します。その際、市場の変化や競合他社の動向、顧客のニーズなどを分析してください。もちろん、自社の弱みと強みを把握することも不可欠です

策定する目的は具体的であればあるほど、DXの取り組みも具体的で効果的になります。同時に、目的の達成度合いや進捗状況が分かる定量データも、目標値として定めておくと良いでしょう

組織体制の整備

ビジョンと目的が決まったら、DX推進の組織体制を整備します。デジタル技術に精通した人材を確保するだけでなく、DXの目的から必要なスキルやノウハウを逆算し、適切な人材を確保してください。IT人材の新規獲得や外部の専門家招聘なども含めて検討しましょう

経営層のコミットメントを確約してもらうことも重要です。全社的な理解を得て、DX推進のリソースを十分に確保するためには、経営層によるトップダウン形式での推進が適しています。そのため、DX推進チームは経営者直属とするのが理想です。

DX推進の具体的なステップについてもっと詳しく知りたい方は、下記の記事をご覧ください。

企業のDX推進とは?目的と課題、4つのステップを解説
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DXの目的

DXの目的を5つ紹介します。いずれも多くの企業に当てはまる目的ですので、ぜひ自社の目的を策定する際のヒントとして活用してください。

効率化と生産性の向上

DXの代表的な目的となるのは、業務の効率化と生産性の向上です。実際、日本企業はDXの目的に「業務効率化・コスト削減」を掲げる傾向にあります。中でも、紙ベースの業務などアナログ作業のデジタル化に取り組む企業が多く、これによりデータの即時アクセスや情報共有が容易になります。

さらに、ITツールやクラウドサービスの導入は、工数やコストの削減にも効果的で、業務の効率化に役立ちます。効率化によって浮いた工数を価値が高い業務に集中することで、企業全体の生産性を向上できるのです。

顧客体験の改善

顧客体験を改善させることは、DXの重要な目的の1つでしょう。デジタル技術の進歩は商品・サービスの創出に有効です。また、顧客データの蓄積を活用できれば、顧客とのコミュニケーションも大きく改善されます。

例えば、AIの導入によってWebサービスの質を高めたり、ビッグデータから顧客のニーズにあった新商品を開発したりできます。顧客体験が改善されれば、顧客満足度も高まり、市場での競争力の強化にもつながるでしょう。

新しいビジネスモデルへの転換

新しいビジネスモデルへの転換をDXの目的とする企業は、少なくありません。デジタル技術や自社が保有するデータを活用すれば、製品・サービスの開発だけでなく、マーケティングの最大化やサプライチェーンの効率化が可能となります。

新しい価値や仕組みを生み出したり、新規顧客を獲得したりすることが容易になるため、新しいビジネスを構築することも難しくないのです。

イノベーションと市場適応性の促進

イノベーションと市場適応性の促進は、多くの企業がDXの目的に掲げています。最新のデジタル技術を活用すれば、画期的かつスピーディーな事業展開が可能です。

例えば、AIからアイディアのヒントを得たり、ビッグデータによって市場の変化を迅速に捉えたりと、生産性を高めることができます。そういった取り組みの積み重ねによって、企業のイノベーションと市場への適応が促進されるのです。

リスク管理とコンプライアンスの強化

DXの目的として、リスク管理とコンプライアンスの強化も挙げられます。煩雑化された既存システムを使い続けると非効率的なだけでなく、システムトラブルやヒューマンエラーを招くリスクも高まりますが、システムを刷新すれば多様なリスクを低減できます。

例えば、セキュリティ面の向上データ分析によるリスクの予測が期待できるだけでなく、労務管理システムや決裁フローの自動化などによって、コンプライアンスの遵守に役立つでしょう。

DX推進においては目的を設定することが重要

DX推進の成功には、明確な目的設定が重要です。目的がないままDXに取り組んだら、リソースが分散して非効率となるだけでなく、自社が掲げるビジョンとは違う方向に進んでしまうおそれがあります。最悪の場合、DXが経営を圧迫する原因になりかねません。

逆にいうと、DX推進を無駄骨にしないためには、適切な目的の策定が必須です。自社にあった目的を策定し、全社的な理解が得られれば、DXを強力に推進できるでしょう。以下記事ではDXの具体例を紹介しています。これからDXに取り組む方は参考にしてみてください。

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