
DXが必要なことに気づいてはいるけれど、「実際に推進するところまでは手が付けられていない」、「思うように進んでいない」という経営者・担当者の方も多いでしょう。実際、中小企業のDX化の現状はどのようになっているのでしょうか。
独立行政法人 中小企業基盤整備機構 広報・情報戦略統括室 総合情報戦略課が、全国の中小企業経営者、経営幹部(個人事業主等を除く)1,000社に調査を行った「中小企業の DX 推進に関する調査 アンケート調査報告書 令和4年5月」から、中小企業のDX化における課題と、すでにDX化を進めている企業の取り組みについて見ていきます。
目次
中小企業のDX化が進まない理由
DX推進において、企業が回答した課題の上位5つは以下の通りでした。
- DXに関わる人材がたりない 31.1%
- ITに関わる人材がたりない 24.9%
- 具体的な成果や効果が見えない 24.1%
- 予算の確保が難しい 22.9%
- 経営者の意識、理解がたりない 19.0%
もしかしたら、大きくうなずいた方もいるかもしれません。いっぽうで、いくつかの課題については状況を改善できる手段も考えられます。
- ITに関わる人材がたりない
- そもそもデジタル媒体を使った採用が、解決策になる可能性がある
近年、テレワークが浸透してきたことで、採用は働く環境や地域に縛られなくなってきています。これまではハローワークを中心に地場で人材を採用していた企業が、Web上に求人を出すことで、企業のある場所から遠くに住んでいる高スキルの人材採用につながることもあるでしょう。 - 予算の確保が難しい
- 補助金制度の活用で、DXを進めるための財源を確保
経済産業省が中心になり、企業のDX化を推進中なので、補助金制度もできています。IT導入補助金2022や経済産業省ものづくり補助金といった制度を活用し、予算を確保する方法もあるでしょう。 - 具体的な効果や成果が見えない
- 他社の取り組みの状況を知ることが、自社での成果に還元されることも
本アンケート調査では、すでにDX化に取り組んでいる企業は「成果が出ている」が 32.9%、「ある程度成果が出ている」が49.4%となっており、何らかの成果を感じている企業は82.3%という結果が出ていました。意外と成果が出ている企業が多いと感じたでしょう。
こうした同じ課題を感じている同業他社の成功体験や推進方法を知ることが、思わぬ気づきとなることも少なくありません。
中長期の目線で求める結果にはやはり時間が伴いますが、まずはひとつ、小さなことから始めると、成果を実感しながら進めることもできるでしょう。
DX化推進中の中小企業の取り組み
DXを推進している企業は、実際にどういったことを進めているのでしょうか。
具体的な取り組み内容の、上位5つは次の通りです。
- ホームページの作成 47.2%
- 営業活動・会議のオンライン化 39.5%
- 顧客データの一元化 38.3%
- 文書電子化・ペーパーレス化 37.5%
- 電子決済導入 35.9%
自社ではDXを推進していないと思っていたけれど、知らずにやっていたということもあるかもしれません。
これらの取り組みには、下のような効果が見込まれます。
- ホームページの作成
- 自社事業のアピールにつながり、マーケティングや採用に役立つ
- 営業活動・会議のオンライン化
- 移動時間が減ることで、時間の効率化につながる
- 顧客データの一元化
- 部署ごとや担当者ごとに管理する必要がなくなり、業務の効率化につながる
- 文書電子化・ペーパーレス化
- 印刷時間と保管場所の削減と、紙やインク代などのコストダウンにつながる
- 電子決済導入
- 会計処理の時間と手間が減り、人件費の節減にもつながる
アンケート調査から2つの項目を取り上げてみてきました。企業が従来のやり方をやめ、DX化することは、業務をデジタル化するというだけではありません。マーケティング活動や業務効率化など、企業にとってプラスの効果をもたらすものであるということがわかりました。
「わが社もDXを進めてみよう」と思ったら、中心となるITの推進担当者を決め、DX推進に取り組む体制を整えましょう。DXの推進はひとりでできるものではなく、企業のトップだけが取り組んでも限界があります。そして、担当者だけでなく、社員全員が組織としてDXを推進していくという風土づくりも必要でしょう。
8割の企業が成果を実感しているというDX。推進後の自社の変化を楽しみにして、取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。